雇用シェア(在籍型出向)はグループ会社間では行われてきましたが、異業種間では行われていませんでした。
雇用シェアとは何なのか、実施されて分かったことも含めて解説しました。
雇用シェアとは
雇用シェアとは、2020年に過剰になった人材の雇用を維持するために、一時的に他企業に出向させる取り組みを指しています。
職業安定法によると、在籍型出向をビジネスとして行うのは禁止されていますが、パンデミック下においては雇用維持が目的なので、出向が可能です。
受け入れる側の企業は、人材を確保することができ、送り出す側の企業はリストラをする必要がなくなります。
また、出向先企業は出向元企業のノウハウを手に入れることができ、出向先企業は出向元企業と関係性を築くことができるため、お互いにメリットがあります。
雇用シェアの実施例
雇用シェアの実施例をまとめました。
ANAホールディングス
2021年4月時点で、ホテル、メーカー、コールセンターなどに750名以上の社員を出向。
APホールディングス(チムニー、塚田農場)
イオンリテールに45人出向し、そのうち10人は転籍。
北海道
宿泊・飲食・製造業の余剰人材を農業・運送業などで雇用
出典:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/jzi/oshigoto.htm
宮城県石巻市
サービス・宿泊・飲食業の余剰人材を漁業・水産業で雇用(技能実習生が来日できなくなったため)
出典:https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10453000/http___webmail.city.ishinomaki.lg.pdf
富山
余剰人材を抱える企業と受け入れ可能な企業をマッチング
出典:https://toyama-lifework.jp/_wp/wp-content/uploads/2020/06/32df15d507c0c2e4a464e66e71e96a93.pdf
雇用シェアが実施されて分かったこと
雇用シェアが実施されて分かったことをまとめました。
中小・零細規模の飲食・宿泊業では雇い止めも
北海道や宮城県石巻市のように雇用シェアが行われたところがあります。
しかし、中小・零細規模の飲食・宿泊業の中には正社員の雇用を守るために、アルバイトの雇い止めを行ったところが多いです。
アルバイトが正社員だったら出向先を見つけて出向させるという選択肢も取れたかもしれません。
そういう意味では、中小・零細規模の飲食・宿泊業には雇用シェアの効果が無かったと言えます。
特に、一連のパンデミックが収まった後は、再びアルバイトの募集をしても応募がないという事態に陥っていることからも分かります。
既に、他業種に移ってしまったからです。
大手は雇用を守ることができた
大手企業は自治体や他の企業への出向を行い、雇用を守ることができました。
それでも大赤字を出しているため、無傷というわけにはいきませんでした。
新規採用の凍結、賞与カットなども実施しているため、社員にとっても大変でした。
地方自治体には受け入れる余力があることが分かった
企業からの出向先として地方自治体がありますが、人を受け入れられる余力があることが分かりました。
つまり、仕事があるということですが、それであれば、無職や非正規の人を正規で雇うということができるのではないでしょうか?
特に就職氷河期世代は非正規の人が多いため、就職支援プログラムでの採用枠をもっと広げられるはずです。
深刻な人手不足の業界にとっては助かった面も
飲食・宿泊・サービス業はもともと人手不足ではありますが、お客さんが来なくなったために余剰人員が発生しました。
そこで、より人手不足が深刻な農業・漁業・水産業は雇用シェアを活用することによって助かった面もあります。